「採卵ではたくさん卵が採れるのに、なぜか凍結胚まで進まない」——PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)で妊活をされている方から、私が現場で一番よくうかがう言葉です。数だけを見れば恵まれているように見える。でも、実際に手元に残る胚は少ない。周りには相談しにくく、クリニックからも明確な答えがもらえない。そんな苦しさを抱えて、ネイチャーボディ鍼灸整体院にご相談に来られる方が本当に多いんです。
この記事では、妊活の現場に18年立ってきた立場から、PCOSの方の妊活で「体側で何を整えるのか」「体外受精でどこを見極めるのか」を、私が実際に見てきた3つのパターンとあわせてお話しします。読み終わる頃には、今の状況をどう整理していくかの手がかりが、少し見えてくるはずです。
監修・執筆: ネイチャーボディ鍼灸整体院 山﨑由浩
鍼灸師(国家資格)/妊活鍼灸18年の臨床経験/フランスの専門学校で国際基準の徒手療法を研修中(国際ライセンス取得を目指す段階)
本記事は、妊活・不妊治療の現場で18年積み重ねてきた臨床経験と、記事末尾に挙げた研究文献をもとに執筆しています。診断・治療については必ず医療機関にご相談ください。
この記事でわかること
- PCOSの妊活で「数は採れるのに進まない」ことが起きる理由の整理
- 体外受精のどの段階(採卵・培養・移植)で止まっているかで、次に考えることが変わるという考え方
- ネイチャーボディの現場で実際に見てきた3つの体験パターン
- 鍼灸で体を整えることが、なぜ「結果判断のスピード」につながるのか
- 産婦人科・不妊治療クリニックと、補完アプローチの上手な組み合わせ方
PCOSの妊活で、なぜ「進まなさ」が起きるのか

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、排卵がうまく起こりにくく、卵巣の中に未成熟な卵胞が多く並んで見える状態です。20〜40代——ちょうど妊娠を考える年代に多くみられ、月経不順や無月経、男性ホルモン過多に伴う症状(ニキビ・多毛など)を伴うこともあります。
妊活の現場感覚でお伝えすると、PCOSの方に一番多い悩みは「数はあるのに、質が揃わない」です。採卵ではたくさん採れる。でも、受精して培養している途中で発育が止まってしまい、凍結胚として残る数が少ない。この構造が、PCOSの妊活を長期化させる大きな理由になっています。
まずは産婦人科での診断と治療が大前提
PCOSは内分泌の疾患です。ですから、最初に必ず産婦人科(不妊治療クリニックを含む)での診察と治療を受けていただきたいというのが、私が一貫してお伝えしていることです。フェマーラやクロミフェンでの排卵誘発、hMG・hCG注射など、医療でしかできない介入がある領域です。
そのうえで現場でよく感じるのは、「産婦人科の治療だけではなかなか良くならない方が、非常に多い」ということ。ここで、徒手療法や東洋医学の視点で体全体を見ていく必要が出てくるんです。
PCOSの原因は一つではない
PCOSは単一の原因では説明できません。女性ホルモン(黄体化ホルモンが過剰、卵胞刺激ホルモンが少ない)や男性ホルモンのバランスの崩れ、インスリンの代謝異常、遺伝的要素、生活習慣(睡眠・運動・ストレス)、体重の影響——さまざまな要因が重なり合って、一人ひとり違った現れ方をします。
だからこそ、PCOSの方に「これをやれば大丈夫」という一律の答えはありません。「今のあなたの体で、何が結果を止めているのか」を切り分けていく作業が必要になります。
体外受精ステージのPCOS——どこで止まっているかで話が変わる
ネイチャーボディに妊活で来られる方の約8割は、体外受精のステージです。PCOSの方も、多くはこのステージで悩んでおられます。ここで大切な視点をひとつ。
段階ごとに「見るポイント」が違う
| 止まる段階 | 現場で私が見ているサイン | 考えるべき次の一手(主治医と相談) |
|---|---|---|
| 採卵 | 数は採れるが、成熟卵の割合が低い/毎回未成熟が多い | 刺激プロトコル(低刺激・中刺激・高刺激)の見直しを主治医に相談 |
| 培養 | 受精はするが胚盤胞まで到達しない/毎回同じ段階で発育停止 | 培養条件(培養液を含む)の見直し。難しい場合は転院の情報収集も |
| 移植 | 良好胚を戻してもHCGすら出ない状態が繰り返す | 着床障害や不育の可能性を、専門医への受診で確かめる時期 |
PCOSの方は、この中で「採卵段階の質」と「培養段階での発育停止」の両方にまたがっているケースが多い、というのが私の見ている現場です。
3回・2回ルールという判断軸
体外受精は結果がすべて数字で可視化される世界です。だからこそ、私はこう見ています。
- 同じ段階で3回続けて結果が出ないとき——続けるのではなく、何かを変える時期です
- ただし鍼灸で体を整えている方の場合は、2回で見立てが立てやすくなります。体側の変数が整っているぶん、「体か、施設側か」の切り分けが速くなるからです
現場で見てきた3つの体験パターン

ここからは、ネイチャーボディで実際に見てきたPCOSの方の経過を、匿名化して3つのパターンとしてお話しします。読んでいて自分に近いと感じるものが、きっとあるはずです。
パターン①:数は採れるのに凍結胚が残らなかった方
この方は、採卵ではいつも10個以上の卵が採れる方でした。数だけ見れば恵まれている。でも、培養の途中で止まってしまう胚が多く、凍結できる胚が毎回ほとんど残らない。原因が説明されないまま、周期だけが積み重なっていく状況でした。
初回にお体を見せていただくと、下腹部の張り、下半身の強い冷え、呼吸の浅さがはっきりありました。骨盤内の血流と、横隔膜・骨盤底筋・腹筋の連動が乏しく、「体としての整っていなさ」が全体に出ていた印象です。
施術では、骨盤・脊柱の構造的な調整、下半身の冷えへのアプローチ、ホルモンバランスに関わる頸椎・頭蓋の調整、横隔膜と呼吸の再教育を積み重ねていきました。栄養面では、タンパク質と鉄・ビタミンD・亜鉛の底上げをご一緒に。
数周期を経て、採卵数は以前と大きく変わらないのに、胚盤胞まで到達する胚が明らかに増えていきました。凍結胚も複数残るようになり、移植で結果が出て、無事に出産まで進まれました。「数が変わったのではなく、質が変わった感覚」というのが、ご本人の言葉として印象に残っています。
※ 実際の現場で見てきたケースをもとにした一例で、経過や結果には個人差があります。
パターン②:「若いのに進まない」で焦っていた方
年齢的にはまだ余裕があると言われていた方が、体外受精に進んでからPCOSと分かり、採卵はできるのに凍結胚が残らない状況で、強い焦りを抱えて来られました。「若いはずなのに、なぜ」という気持ちは、本当につらかったと思います。
体を拝見すると、緊張が全身に強く残っていました。仕事のプレッシャーと妊活のプレッシャーが重なり、自律神経の交感神経側が慢性的に優位になっている状態です。血流も内臓の動きも、そのぶん抑え込まれている印象でした。
この方には、まず「緊張をゆるめる」ことに時間をかけました。強く押さない、やさしいファシアリリース(体をつなぐ膜組織を整える手技)と呼吸の再教育。頸椎・頭蓋の調整で自律神経が落ち着く方向を作り、腹部と下半身の血流を上げていく——この順序で進めていきました。
体感の変化が出てきてから、採卵での胚の発育が安定し、初めて凍結まで進めるようになりました。今は妊娠が経過中です。「若いのにうまくいかない体」から「整えば応えてくれる体」に変わった、というのがご本人の実感です。
※ 実際の現場で見てきたケースをもとにした一例で、経過や結果には個人差があります。
パターン③:体重・生活習慣の見直しからスタートした方
PCOSに加えて、体重の増加とインスリン抵抗性がはっきり指摘されていた方です。産婦人科でも減量の話が出ていましたが、「何から手をつけていいか分からない」状態で、来院されました。
この方には、施術と並行して、妊娠を意識した栄養面の設計をご一緒に組み立てました。極端な糖質制限ではなく、血糖の波を小さくする食べ方、タンパク質の量、間食の設計。運動は「歩くこと」から。施術は月2回のペースで、骨盤・背骨・自律神経の調整を継続しました。
約6ヶ月かけて、体重・基礎体温・月経周期のいずれもが緩やかに整っていきました。採卵の反応も以前より読みやすくなり、その周期で得られた胚での移植が成立。ここまで来るのに一定の時間がかかったのは事実ですが、「体そのものが変わった土台」があったからこそ、というのが率直な感覚です。
※ 実際の現場で見てきたケースをもとにした一例で、経過や結果には個人差があります。
3つの体験談から見える共通点・分かれ目

3つのケースは、年齢も背景も違います。でも、共通していることがいくつかあります。
- 産婦人科・不妊治療クリニックでの治療は続けていた(=医療の土台がある)
- そのうえで「体側で整えるべき部分」が残っていた(冷え・自律神経・血流・栄養)
- 体を整えることで、「何が結果を止めているのか」の切り分けが速くなった
逆に、分かれ目になったのは何かというと、「どこで止まっているのかを整理して、体側と施設側の両方に手を打てたかどうか」だと感じています。同じPCOSでも、体側の変数が違えば、次にやるべきことは違います。ここを一人で判断するのは、現実には非常に難しい。
第三者視点の見立て——私はこう診ています

私はネイチャーボディで、東京・神奈川のさまざまな不妊治療クリニックに通う方を横断的に見てきました。そこから見えてくるのは、PCOSの妊活は「産婦人科の治療」と「体側の整え」の両方が噛み合ったときに、初めて前に進みやすくなるということです。
「数は採れるのに残らない、を”体質だから仕方ない”で終わらせない。
採卵の反応、培養の段階、移植の判定——どこで止まっているのかを一緒に整理して、体側でできることをやり、それでも動かない部分は主治医と施設側で見直す。
この両輪が動き始めると、同じPCOSの体でも、経過が違ってきます。」
研究の面でも、PCOSに対する鍼灸について、排卵率・妊娠率の改善、LH・テストステロン・インスリン抵抗性の低下が複数のメタアナリシスで報告されています(Umbrella Review 2024ほか)。また、メトホルミンと鍼灸を併用したグループが、メトホルミン単独よりも妊娠率が高かったという報告もあります。これらは「補完アプローチとして意味がある」という現場感覚と方向性が一致する結果です。ただし、研究の質にはばらつきがあるため、「必ず効く」という話ではなく、「土台を整える意味がある」という表現が誠実だと考えています。
実践編:PCOSの方が今日から整えられること
1. 産婦人科の治療方針を「自分の言葉で」把握する
今の治療がどのプロトコルなのか、次に何を狙っているのか、AMH・LH/FSHの値がどう推移しているのか。すべてを覚える必要はありませんが、自分の状況を一言で説明できる状態にしておくと、主治医との会話の質が変わります。
2. 睡眠・食事・運動の「底」を上げる
- 睡眠:0時前の就寝を目安に。ホルモンバランスは睡眠の影響を強く受けます
- 食事:タンパク質を毎食一定量、血糖の波を小さくする組み合わせ、極端な制限は避ける
- 運動:歩くことから。まず「毎日20〜30分」で十分
3. 冷え・呼吸・骨盤内の血流を意識する
下半身の冷え、浅い呼吸、座りっぱなしの生活は、骨盤内の血流を落とします。湯船に浸かる、腹式呼吸を1日数分、股関節を動かす——これだけでも変わってきます。
4. 「体側の変数」を整えるパートナーを持つ
PCOSは原因が一つではないぶん、体側の整えも一律ではありません。妊活を理解した施術者のもとで、継続的に体を整えていくこと。これが、結果判断のスピードを上げる土台になります。
鍼灸併用の価値——「判断のスピード」が変わる

ネイチャーボディがお伝えしているのは、「鍼灸をすれば必ず妊娠する」という話ではありません。私が18年見てきた中で確信しているのは、体を整えておくと、結果が出なかったときに「体のせいか、施設側の要因か」を切り分けやすくなる、ということです。
私は、施術を始めていただいてから、4ヶ月を一つのライン、6ヶ月を大きなベンチマークとして体の変化を見ています。ここで動きが見えなければ、続けるのではなく「次の手を主治医と考える時期」だと判断しています。これは効果を約束するタイムラインではなく、「早く見切りをつける」ための区切りです。
フランスで学んでいる国際基準の徒手療法という視点
私は鍼灸師の国家資格を保有したうえで、フランスの専門学校で国際基準の徒手療法(オステオパシー:体を一つのつながりとして捉え、内臓・骨格・膜組織にアプローチする欧州で確立した手技の体系)を学んでいる最中です。日本にはオステオパシー・カイロプラクティックの国家資格制度が無いため、「どこで・どれだけ学んでいるか」を私自身が明示するようにしています。世界基準の徒手療法 × 日本が世界に誇る鍼灸——この2つを組み合わせて、PCOSの方の「体側の整え」をご一緒しています。
まとめ
- PCOSの妊活は、まず産婦人科での診断・治療が大前提。そのうえで補完アプローチが力を発揮する場面がある
- 体外受精は「採卵・培養・移植」のどこで止まっているかで、次にやるべきことが変わる
- 同じ段階で3回続けて結果が出ないなら見直しの時期。鍼灸で整えている方は2回で切り分けが速くなる
- 私は4ヶ月をライン、6ヶ月をベンチマークに、体の変化と次の手を判断している
- PCOSの体は「変えられない体質」ではなく、「整え方次第で応えてくれる体」だと現場で感じている
よくあるご質問(FAQ)
PCOSと診断されました。鍼灸整体だけで妊娠できますか?
いいえ、鍼灸整体だけで妊娠を目指す考え方は取っていません。PCOSはホルモン疾患ですので、産婦人科・不妊治療クリニックでの医療管理が大前提です。ネイチャーボディでは、その医療と並行して、体側で整えられる部分をご一緒するという位置づけです。
採卵ではたくさん採れるのに凍結胚が残りません。なぜですか?
PCOSの方に非常に多いご相談です。数は採れても、成熟度や質が揃わないことが背景にあることが多いです。刺激プロトコルの見直しは主治医と相談する領域ですが、体側では血流・冷え・ホルモンバランスに関わる自律神経の状態を整えることが、質の下支えになると考えています。
「3回ルール」「2回ルール」とは何ですか?
同じ段階(採卵・培養・移植)で3回続けて結果が出ないなら、続けるのではなく次の手を主治医と考える時期だ、という私の判断軸です。鍼灸で体を整えている方は、体側の変数が揃っているぶん切り分けが速くなるので、2回を目安にしています。妊娠を約束する数字ではなく、「早く見切りをつけるための区切り」です。
「6ヶ月以内ルール」というのは、6ヶ月で妊娠できるという意味ですか?
いいえ、まったく違います。私が施術開始から4ヶ月をライン、6ヶ月をベンチマークとして体の変化を見ている、という「私の判断軸」です。この期間で動きが見えなければ、次の手を主治医と考える時期だと判断します。効果を保証するタイムラインではありません。
PCOSで肥満傾向があります。まず何から始めるべきですか?
体重とインスリン抵抗性はPCOSと相互に関係します。産婦人科での方針を土台に、極端な制限ではなく「血糖の波を小さくする食べ方」「タンパク質量の底上げ」「歩く運動」から始めるのが、続けやすくかつ結果に結びつきやすい進め方だと感じています。
タイミング法・人工授精のステージですが、PCOSでもまず鍼灸を始めてよいですか?
はい、このステージから体を整えることには意味があります。ただし、タイミング法6回・人工授精6回を一つの目安として、結果が出なければ次のステージ(体外受精)を主治医と相談することもあわせてご検討ください。年齢によっては、6回を待たずに次を考えることもあります。
鍼灸は痛くないですか?PCOSの体でも受けられますか?
ネイチャーボディの施術は、強く押さないやさしいファシアリリースと、髪の毛ほどの細い鍼、心地よい温度のお灸が中心です。PCOSの方の施術経験も豊富にありますので、体調に合わせて進めていきます。
通院頻度はどのくらいが目安ですか?
体外受精の周期に合わせる場合、月2回(低温期と高温期など)を基本にすることが多いです。生活状況や周期の進み方によって調整します。まずは初回にお体を拝見してから、ご一緒に組み立てていきます。
産婦人科の治療をやめたいのですが、どう思いますか?
PCOSは内分泌の疾患ですので、医療管理をやめることはお勧めしません。私たちができるのは、医療と並行して体側の整えを担うことです。治療方針そのものは、必ず主治医とご相談ください。
夫はどこまで関わるべきですか?
妊活は夫婦のプロジェクトです。体外受精のステージでは相対的に女性側の比重が大きくなりますが、生活習慣・栄養・睡眠は夫婦で整えていくほうが結果的に近道になります。男性側の精子の運動率も、生活習慣で変わってくる領域です。
参考にした研究・エビデンス
- Effects of acupuncture on POI and PCOS: umbrella review of systematic reviews (2024). 排卵率・妊娠率の改善、LH・テストステロン・インスリン抵抗性の低下が示唆。PMID: 39655237
- Acupuncture combined with metformin vs metformin alone in PCOS (SR/MA). 併用群が単独群より妊娠率・排卵率で優位。Frontiers in Endocrinology.
- Acupuncture for women undergoing IVF: updated systematic review and meta-analysis (2024, 42試験・N=7,400). 臨床妊娠率 RR=1.19(95% CI 1.06-1.34)。
- Effects of acupuncture on pregnancy outcomes in women undergoing IVF: updated SR/MA (2023, 25試験・N=4,757). 臨床妊娠率・生児出生率の向上を報告。ただし早期流産率の増加(RR=1.51)も報告あり。PMID: 37436463
- Acupuncture as Treatment for Female Infertility: SR/MA (2022, 27 RCT・N=7,676). 生児出生率 RR=1.34、臨床妊娠率 RR=1.43。PMC8865966
- 不妊クリニックにおける鍼灸治療導入の実態に関するアンケート調査 (2015, J-STAGE). 認知率55.1%・導入率8.3%。
※ 本記事は診断・治療の代わりになるものではありません。症状や治療方針については、必ず産婦人科・不妊治療クリニックの主治医にご相談ください。
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の施術について詳しく見る(ネイチャーボディ鍼灸整体院)
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