機能性ディスペプシアと自律神経失調症の関係
食後に胃がもたれる。少し食べただけでお腹が張って、家族に「もう食べないの?」と聞かれて誤魔化してしまう。みぞおちがシクシクする。胸やけや吐き気が続く。それなのに、胃カメラを受けても「炎症はありません」「異常なし」と言われる——。
このような状態は、医療機関で「機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)」と説明されることがあります。以前は「神経性胃炎」「ストレス性胃炎」と呼ばれていた領域で、胃そのものに目に見える傷や炎症がないのに、胃の症状が続く状態です。
そして多くの方が、同時にこうも感じています。「胃だけじゃなくて、なんだかずっとだるい」「夜、布団に入っても頭がざわついて眠りに落ちるまで小一時間かかる」「電車で急に息苦しくなる」——胃の不調と、めまい・のぼせ・動悸・眠りにくさといった、いわゆる自律神経失調症の症状が、同じ人の中で重なっていることが本当に多いのです。
ネイチャーボディ鍼灸整体院にも、まさにこうした「病院では問題ないと言われたのに、胃の不快感と体全体のつらさが続く」という方が数多くご相談にいらっしゃいます。整体や鍼灸というと肩こり・腰痛のイメージが強いかもしれませんが、実際にはこの「検査で異常なし」の胃腸・自律神経の不調こそ、ネイチャーボディ鍼灸整体院で多くご相談いただく領域です。
この記事では、機能性ディスペプシアと自律神経がなぜ・どうつながっているのかを、一般に知られている情報と、鍼灸師の国家資格を持ち臨床21年・延べ16万回の施術に立ってきた山﨑由浩院長が現場で着目しているポイントの両面から、患者さん目線で深く整理していきます。「胃だから胃だけを見る」では、なぜぶり返すのか。そこまで一緒に掘り下げていきましょう。
こんな悩み、当てはまりませんか

まず、ご自身の状態を確認してみてください。次のうち、いくつ当てはまるでしょうか。
- 少し食べただけでお腹が張って、いつまでも胃に残っている感じがする
- 食後にみぞおちが重い、もたれる、胃が動いていない感覚がある
- 空腹時にみぞおちがシクシク、キリキリ痛む
- 胃カメラ・血液検査を受けたが「異常なし」「炎症なし」と言われた
- ピロリ菌を除菌したのに、胃の調子が戻らない
- 胃薬(胃酸を抑える薬など)を飲んでいるが、その場しのぎで戻ってしまう
- 胃の不調と一緒に、めまい・のぼせ・動悸・息苦しさ・強い疲労感がある
- 夜、眠りが浅い。朝、目覚めても体が鉛のように重い
- 手足は冷えるのに、お風呂に入るとのぼせて具合が悪くなる
- 「ストレスのせい」「気の持ちよう」と言われ、自分でもそう思おうとしている
いくつも当てはまった方は、胃だけの問題として片づけると、なかなか出口が見えにくい状態かもしれません。特に「胃の症状」と「自律神経の症状」が同居している場合、この二つは別々のトラブルではなく、背景で同じ根っこにつながっていることが少なくないからです。
そして、これらの症状のいちばんつらいところは、周りから理解されにくいことです。「毎日症状が違う」ことを人に説明しても、なかなか信じてもらえない。「また今日も調子が悪い」と言うたびに、自分がめんどくさい人間だと思われている気がする。「怠けているだけなのかもしれない」と、自分を責めてしまう——。そうやってご自分を責める必要は、まったくありません。体には、ちゃんと理由があります。この記事は、その理由を筋道立てて説明するために書いています。
なぜ胃と自律神経はつながるのか——解剖から掘り下げる
ここがこの記事の心臓部です。「機能性ディスペプシアは自律神経が関係している」という説明は、あちこちで見かけると思います。でも「では、なぜ?」「体のどこで、どうつながっているの?」まで説明されることは、ほとんどありません。順を追って掘っていきます。
そもそも胃は「動く臓器」であり、その動きを操っているのが自律神経
胃は、ただ食べ物を溜める袋ではありません。食べ物が入ってくると、胃の上部(胃底部)がやわらかくふくらんで受け止め(これを適応性弛緩といいます)、続いて胃の下部(幽門前庭部)がリズミカルに収縮して、内容物を少しずつ十二指腸へ送り出していきます。この一連の動きが、私たちの意思とは無関係に、自動で行われている。ここが重要です。
この「自動運転」を担っているのが、自律神経です。自律神経は交感神経と副交感神経の二つがあり、ざっくり言えば次のように働きます。
- 交感神経:活動・緊張・ストレスのときに優位になる。血液を筋肉や脳に送り、胃腸の働きは後回し(抑制方向)にする
- 副交感神経:休息・リラックスのときに優位になる。胃腸に血液を送り、消化活動を高める(促進方向)
本来、食事のときは副交感神経が優位になって、胃がしっかりふくらみ、しっかり動きます。ところが、ストレス・緊張・睡眠不足・浅い呼吸が続くと、交感神経が優位のまま食事を迎えることになる。すると、胃底部がうまくふくらまず、少し食べただけで張ったように感じる。胃の送り出しも鈍くなり、いつまでも食べ物が残っているような重さ(胃もたれ)が出る。これが機能性ディスペプシアの「食後愁訴」の正体の一つと考えられています。
「痛くないはずの刺激」を痛みとして感じてしまう——内臓知覚過敏
もう一つ、機能性ディスペプシアで大きいのが「内臓知覚過敏」です。健康な胃なら気にもならない程度の刺激——少量の食べ物、わずかな胃酸、胃の伸び——を、過敏に「痛み」「不快感」として拾ってしまう状態です。
この知覚の感度も、自律神経とストレス反応系が深く関わっています。近年は「脳腸相関(brain-gut axis)」という枠組みで、脳と腸が神経・ホルモンを介して双方向に会話していることが盛んに研究されています。脳がストレスを感じると腸の動きと感覚が変わり、逆に腸の不調が脳に不安として跳ね返る。「胃が痛い→不安になる→さらに胃が痛い」という悪循環は、気のせいではなく、実際に神経のネットワークで起きている現象なのです。
では、その自律神経は「どこ」で乱れるのか——背骨・肋骨・呼吸
ここから、山﨑院長がずっと臨床で見てきた視点に入ります。「自律神経が乱れる」と言われても、多くの方は「じゃあどうすれば」と途方に暮れます。目に見えないものだからです。院長は、この目に見えない自律神経の状態を、体の構造——背骨・肋骨・呼吸・内臓——という手で触れられる場所に落とし込んで捉えています。
自律神経のうち交感神経は、背骨(特に胸椎)のわきから枝分かれして、内臓へと伸びていきます。つまり胃腸をコントロールする神経は、背骨を通り道にしているのです。だからこそ院長は動画でもこう語っています。「背骨の調子が悪くなると姿勢が悪くなる。姿勢が悪くなると内臓が圧迫され、動きが悪くなったりずれたりしてしまう」。背骨→姿勢→内臓、という連鎖です。
さらに院長が重視するのが肋骨です。背骨がゆがんで姿勢が崩れると、その上に乗っている肋骨(胸郭)が圧迫されて動きが悪くなる。肋骨の中には心臓・肺だけでなく、その下に胃や食道、肝臓が収まっています。院長は「肋骨のバランスが崩れると自律神経の不調につながる」と繰り返し述べています。原因のはっきりしない不調——めまい、だるさ、便秘や下痢、眠れなさ——の多くに、この肋骨と自律神経が関わっているという見立てです。
「浅い呼吸」というキーワード
この背骨・肋骨の話は、一つのキーワードに集約されます。呼吸です。
呼吸は、横隔膜という大きな膜状の筋肉と、肋骨の広がり・縮みで行われます。背骨が丸まり、肋骨の動きが固まると、深く息が吸えなくなる。胸の上のほうでしか息が入らず、常に息苦しさの手前にいるような状態になります。
ここが決定的に大事なところです。呼吸は、自律神経のうち私たちが唯一、意識的に触れられる窓口なのです。ゆっくり長く吐く呼吸は副交感神経を優位にし、浅く速い呼吸は交感神経を優位にします。逆に言えば、肋骨が固まって浅い呼吸しかできない状態が続けば、副交感神経が働きにくくなり、リラックスできない=胃腸が消化モードに入れない、という状態が慢性化してしまう。
しかも横隔膜は、その真下にある胃と物理的に隣り合っています。横隔膜がしっかり上下に動くことは、それ自体が胃へのやさしいマッサージにもなります。呼吸が浅く横隔膜の動きが乏しくなれば、胃の動きも連動して鈍りやすい。だから院長は、胃の不調に対して「まず呼吸を深く吸える状態を取り戻す」ことを土台の一つに置いています。
内臓を包む「膜(ファシア)」という視点
もう一段、深く掘ります。院長のアプローチの中核にあるのが、ファシア(膜)という考え方です。内臓は、それぞれがバラバラに浮いているのではなく、膜(ファシア・間膜)で互いに、そして背骨や横隔膜とつながっています。院長は動画でこう説明しています。「肝臓が胃の方を引っ張ったり、胃が下の方を引っ張ったり、すごく広い範囲でのつながりがある。これをファシアという表現で捉えている」。
この膜が、ストレスや内臓の使いすぎ、浅い呼吸が続くことで固くなり、萎縮したように張ってくる。すると内臓の動き(胃の蠕動運動など)も制限され、同時に膜を通じて背骨や肋骨を引っ張り、姿勢の崩れや背中の張りとしても現れる。「胃の不調が、背中や左肩の張りとして出ている」——院長がしばしば口にするこの現象は、この膜のつながりで説明できるわけです。
こうして整理すると、機能性ディスペプシアと自律神経失調症が同じ人に同居するのは、当然の帰結だとわかります。背骨のゆがみ→肋骨の動きの低下→浅い呼吸→副交感神経が働きにくい→胃の動きと感覚が乱れる。この一本の流れが、片方の入口から見れば「胃の不調(機能性ディスペプシア)」、もう片方の入口から見れば「めまい・動悸・不眠(自律神経失調症)」として表面化しているだけなのです。
「異常なし」が本当に意味していること
ここで、多くの方が引っかかっている「検査では異常なし」について、正直にお伝えしておきたいことがあります。
まず、胃カメラで炎症も潰瘍もないと確認できたこと自体は、とても大事なことです。胃潰瘍や胃がんといった「病気(病理)」ではないと分かった。これは安心材料であり、それを確認してくれた医療機関の検査には大きな意味があります。
そのうえで、知っておいてほしいことがあります。自律神経そのものを直接調べる検査は、実は街のクリニックでは行われていません。自律神経を厳密に評価する検査は、自律神経にわざと負荷をかけて反応を見るもので、不整脈や呼吸困難が起きても即対応できる環境が必要なため、大学病院に入院して行うほどのものです。この検査を実際に受けたことがある方は、ほとんどいません。
つまり「異常なし」と言われたとき、それは「自律神経を調べた結果、正常でした」ではなく、「他の病気ではありませんでした」という意味にすぎないのです。あなたは「自律神経そのものはまだ調べられていない」状態で、行き場をなくしている。だから「では、この不調は何なのか」への答えが出ないまま終わってしまう。あなたが感じている不調は、気のせいでも、怠けでもありません。検査で写らない「機能」の問題が、そこにあるのです。
山﨑由浩院長が臨床で診ているポイント
ここからは、ネイチャーボディ鍼灸整体院の山﨑由浩院長が、機能性ディスペプシアと自律神経の不調を抱えた方に対して、実際にどこを、どういう順番で診ているのかをお伝えします。
私が施術の現場で大切にしているのは、「症状が出ている場所=原因の場所とは限らない」という考え方です。胃の不調だからといって、お腹だけを見て終わりにはしません。これはネイチャーボディ鍼灸整体院の整体すべてに共通する見方で、痛みや不調のある場所は多くの場合「結果」であって、原因は別の場所にあることが少なくないからです。
実際にこういうことがあります。膝の痛みで来院された方の背中を触って、「胃や食道は悪かったりしますか?」とお聞きすると、驚かれる。うかがってみると、若い頃から左の肩こりが強く、この数年は胃炎と食道炎に悩まされていた——というケースです。膝の痛みが背中から来ていて、その背中の張りが胃や食道の状態とつながっていた。体はさまざまな場所でつながっている、ということを、現場では何度も実感します。もちろんこれは一つの視点であり、すべての方に当てはめるものではありません。
私が自律神経の関わる胃の不調で必ず確認するのは、次のような点です。まず背骨、特に首と背中の上のほう。ここの動きが落ちていないか。次に肋骨と胸の前、みぞおち周辺の硬さ。呼吸を深く吸えているか、胸の上だけで浅く吸っていないか。そして胃を包む膜(ファシア)の状態です。胃は体表からも位置がわかりやすく、その膜の張りを触れて確認することがあります。あくまで臨床上の視点で、医学的な検査に代わるものではありませんが、この胃を取り巻く膜が固くなって萎縮しているように感じられる方が、自律神経の不調を伴う方には非常に多い、というのが私の実感です。
もう一つ、私は体の傾向をいくつかの型で捉えることがあります(あくまで傾向で、年齢だけで一律に決まるものではなく個人差が大きい前提です)。中でも自律神経が関わりやすい型では、背中の上のほうや胸の前、みぞおち周辺に硬さが出やすく、呼吸が浅くなっている方が多い。そして内臓を包む間膜が固くなって、胃腸の動きにも影響していると感じられる。「食べるともたれる」「油物が苦手」「便通が乱れる」といった訴えを、私はこの自律神経と体の状態のつながりの一面として見ています。
そして、40歳を境に見方を少し変えます。39歳以下であれば背骨を整えることで改善に向かうケースが多いのですが、40代以降になると背骨だけでは戻りにくく、内臓の疲れ・膜の緊張が重なっていることが非常に多くなります。だからこそ、背骨と内臓の両面から診る必要が出てくる。ペルソナである30〜40代の女性は、まさにこの重なりが起こりやすい年代です。
こうした見立ては、私が21年の臨床で積み重ねてきた着眼点であり、医学的な因果として断定するものではありません。ただ、「胃薬だけでは触れられていない、機能的な部分」を整理して、胃が本来の働きを取り戻しやすい状態を整えていく——それがネイチャーボディ鍼灸整体院という整体院の役割だと考えています。
初回では、胃に関係しうる背骨・肋骨・呼吸・自律神経・精神的ストレス・食習慣・睡眠、そして過去の大きな衝撃(交通事故や強い転倒など。硬膜への衝撃が長年の自律神経症状の背景に残っていることがあるためです)を、カウンセリングと丁寧な問診・触診で確認していきます。
なぜ、他ではよくならなかったのか

「胃薬を飲んでも、その場しのぎで戻ってしまう」「マッサージを受けてもすぐ元通り」——こうした声を、ネイチャーボディ鍼灸整体院では本当によく聞きます。なぜでしょうか。
理由はシンプルで、「症状が出ている場所」だけに対処しているからです。胃薬は、つらい症状をやわらげる大切な助けになります。胃酸を抑えたり、胃の動きを助けたりして、その場のつらさを軽くしてくれる。でも、薬は背骨のゆがみを整えるものでも、固まった肋骨を動かすものでも、浅くなった呼吸を深くするものでもありません。役割が違うのです。だから、乱れやすい状態そのものが変わらなければ、薬が切れればまた戻ってくる。これは薬が悪いのではなく、そもそも別の取り組みが必要な領域だ、というだけの話です。
マッサージやその場しのぎの整体で戻ってしまうのも同じ理屈です。背中の張りをその場でほぐしても、その張りを生み出している背骨・肋骨・内臓の膜が変わっていなければ、時間が経てば戻される。院長が動画で語っている「背骨だけ施術しても内臓がそのままなら戻される、内臓を施術しても背骨がそのままなら戻される」という、負のループの話そのものです。見なければいけないのは、症状が出ている場所ではなく、乱れやすい状態そのもの。ここに手が入っていないと、いつまでも同じところをぐるぐる回ることになります。
もう一つ、正直にお伝えしたいことがあります。私は21年この仕事をしてきて、今もなお、わざわざフランスの専門学校まで国際基準の徒手療法(オステオパシー)を学びに通っています。なぜか。日本の徒手療法、整体の世界は、まだ国際基準に追いついていないと感じているからです。臨床に立ち続けるなら、学び続けるのはマストだと私は考えています。残念ながら、学ぶことをやめてしまった施術者が、良くならない患者さんを生んでいる現実がある。だから私は、21年やった今も学び続けます。この記事で、胃の不調を最新の研究にまで遡って説明しようとしているのも、同じ姿勢からきています。
研究では、どう報告されているか
ここで、私の臨床上の見立てを、公開されている研究がどう裏づけているかを整理しておきます。整体・鍼灸を医療の代わりにするためではなく、「補完としてどこまで報告があるのか」を、誠実に共有するためです。
機能性ディスペプシアに対する鍼灸は、消化器領域の中でもエビデンスの状況が良い部類に入ります。2026年に更新されたメタアナリシス(複数の質の高い研究をまとめて解析したもの)では、23件の試験・約2,450人を対象に、偽の鍼(経穴を外したにせの鍼)と比較して、中〜高い確実性で症状とQOL(生活の質)を改善したと報告されています。しかも有害事象の増加は見られませんでした。興味深いことに、この研究では胃腸の動きを助ける薬(消化管運動改善薬)と比べても、QOLの面でさらに改善したと報告されています。この分野の研究は2014年時点では「有効か安全かは不明」とされていましたが、12年で試験数が3倍以上に増え、評価が大きく変わってきた領域です。
自律神経そのものへの働きかけについても、報告があります。心拍のゆらぎ(心拍変動=HRV)は自律神経のバランスを映す指標として使われますが、鍼が副交感神経の働きを高め、この心拍変動を変化させる可能性が、システマティックレビュー・メタアナリシスで報告されています。ただし対象となった研究数は限られており、確定的な段階ではありません。
背骨への徒手的なアプローチ(脊椎マニピュレーション)が自律神経に影響しうる、という報告もあります。ただしこちらはエビデンスの質が低い〜中程度で、まだ確定的とは言えません。「影響しうる」という段階の報告として受け止めるのが誠実だと考えています。
また、胃腸の不調全般に目を広げると、過敏性腸症候群(IBS)については、2026年に消化器の国際的な一流誌に掲載されたメタアナリシスで、偽の鍼と比べても反応率が有意に高い(約6割高い)と報告されています。胃と腸は自律神経・脳腸相関という共通の土台の上にあるため、この領域の知見の積み上がりは、機能性ディスペプシアを考えるうえでも参考になります。
強調しておきたいのは、これらはいずれも「治る」ことを保証するものではない、ということです。「関連が示唆される」「改善が報告されている」という段階の知見であり、医療の代わりにはなりません。あくまで、検査で異常が見つからない機能的な不調に対して、整体や鍼灸という選択肢を検討する際の、一つの材料として受け止めていただければと思います。
ネイチャーボディ鍼灸整体院の整体では何をするのか
では、この見立てに沿って、ネイチャーボディ鍼灸整体院の整体では具体的に何をするのか。大きく3つの角度から組み立てます。
一つ目は、正しい骨格を取り戻すことです。背骨の動かなくなった箇所、特に首と背中の上のほうを中心に整え、続いて肩関節・股関節・膝・肘・手首といった全身の関節の動きを取り戻していきます。背骨がしっかり動くようになると、全身の緊張がゆるみ、自律神経の通り道も影響を受けにくくなると考えています。ネイチャーボディ鍼灸整体院の整体は、バキバキと強く鳴らすようなものではなく、体への負担が少ないやさしい方法です。
二つ目は、呼吸を深く吸えるようにすることです。ここがネイチャーボディ鍼灸整体院の整体の中核であり、他院との違いが最も出る部分です。肋骨・横隔膜・内臓まわりで、呼吸に制限をかけている可能性のある部分を、呼吸を使ってファシア(膜)をリリースする繊細な手技で整えていきます。これは、私がフランスの専門学校で学んでいるオステオパシー(内臓や関節の動きに着目し、体を一つのつながりとして捉える国際基準の徒手療法)の考え方に基づく手技です。浅くなった呼吸が深くなることは、副交感神経が働きやすくなること——つまり胃腸が消化モードに入りやすくなることに直結します。
三つ目は、鍼灸で自律神経を調整することです。はり師・きゅう師の国家資格を持つ施術者が、お体の状態に合わせて、自律神経に関わるツボへ鍼やお灸を施していきます。ツボは、東洋医学の入口の言葉ではありますが、機能的に言えば「筋肉のこわばりの反応点であり、血流を促す点」です。自律神経が関わる状態では、強い刺激よりも、むしろ弱い刺激でリラックスできる方向、温める施術のほうが向いていることが多いと考えています。
この「世界基準の徒手療法 × 日本が世界に誇る鍼灸」という組み合わせで、背骨・呼吸・自律神経の三方向から、胃が本来の働きを取り戻しやすい状態を整えていく。これがネイチャーボディ鍼灸整体院の整体の考え方です。
施術者を選ぶときに、確認してほしいこと
ここで一つ、患者さんに知っておいてほしいことがあります。日本には、オステオパシーやカイロプラクティックについて、法的な国家資格の制度がありません。つまり、学校できちんと学んでいなくても「オステオパシー」と名乗れてしまうのが実情です。だからこそ私は、施術者を選ぶときには「どこで、どれだけ学んだのか」を確認していただきたいと思っています。私自身は、フランスの専門学校で国際基準のオステオパシーの課程を、今まさに学んでいる最中です(国際ライセンス=D.O.は未取得で、取得を目指して学び続けている段階です)。他院を批判するためではなく、あなたが自分で見極めるための軸として、お伝えしています。
自宅でできる安全なセルフケア
機能性ディスペプシアと自律神経の不調は、日々の過ごし方と深く関わります。無理のない範囲で、次のことを試してみてください。整体に通う・通わないにかかわらず、ご自身でできる大切な土台です。
1. ゆっくり長く吐く呼吸
最も大切にしてほしいのが呼吸です。浅い呼吸が続くと、リラックス側の副交感神経が働きにくくなります。4秒かけて鼻から吸い、6〜8秒かけて口からゆっくり吐く。これを1日数回、数分でかまいません。特に食事の前に一息つくと、胃が消化に向けて落ち着きやすくなります。吐くときにお腹をやわらかくへこませ、吸うときに肋骨が横に広がるのを感じられると、横隔膜が動いているサインです。
2. 食事のとり方を見直す
一度にたくさん食べず、腹八分目を意識します。少量をこまめに分けて食べるのも一つの方法です。早食いを避け、よく噛むこと。噛むこと自体が消化を助け、食事に意識を向けることでリラックスにもつながります。脂っこいもの・刺激物・アルコール・カフェインで症状が出やすい方は、その量やタイミングを調整しましょう。夜遅い、就寝直前の食事は避け、寝る2〜3時間前までに済ませるのが目安です。夜中までスマホを見る習慣も、実は自律神経に負担をかけます。目に入る光の量を調整しているのは自律神経の一部だからです。
3. 睡眠と生活リズムを整える
就寝・起床の時間をなるべく一定にし、睡眠時間を確保することは、自律神経のバランスを保つうえでの基本です。夜、頭がざわついて眠れないときは、上の呼吸法を布団の中で試してみてください。
4. 軽く体を動かす習慣
ウォーキングなどの軽い有酸素運動や、背中・胸まわりをゆっくり伸ばすストレッチは、血流や気分のリフレッシュに役立ちます。特に胸を開く動き(両手を後ろで組んで胸を広げる、など)は、丸まった背中と固まった肋骨をゆるめ、呼吸を深くするのに役立ちます。運動習慣が体のコンディション維持に役立つのは、私も臨床で強く感じているところです。
注意点として、体調が悪いときや痛みが強いときに無理をしないこと。お腹を強く押す・叩くといった刺激や、痛みを我慢してのストレッチは避けてください。セルフケアは「気持ちよく続けられる範囲」が基本です。数週間試しても改善しない、あるいは悪化する場合は、次に挙げる医療機関の受診を検討しましょう。
医療機関を受診すべきサイン
機能性ディスペプシアは「検査で異常が見つからない」ことが前提です。逆に、次のような症状がある場合は、まだ見つかっていない病気(胃潰瘍・胃がん・膵臓や胆のうの疾患など)が隠れている可能性があるため、整体や鍼灸ではなく、まず医療機関を受診してください。
- 食事量を減らしていないのに急に体重が減っていく
- 黒いタール状の便・血便・吐血がある(消化管出血のサイン)
- 食べ物や水が飲み込みにくい、つかえる感じが強くなってきた
- 貧血を指摘された、めまい・ふらつきが強い
- 夜間や安静時にも強く痛む、痛みが日に日に悪化している
- 発熱を伴う腹痛がある
- 手足のしびれ・麻痺・力が入らないなど神経症状を伴う
これらがある場合は、消化器内科・内科などをまず受診してください(吐血など緊急性が高いときは救急も検討を)。また、まだ一度も胃の検査を受けていない方は、自己判断せず、一度は消化器内科で胃カメラなどの検査を受けることをおすすめします。「検査で異常がないこと」を確認して初めて、機能性ディスペプシアという枠組みで考えられるからです。
一人で抱え込まず、ご相談ください

「胃の不調と自律神経、どちらから手をつければいいのかわからない」——そう感じている方は、本当に多くいらっしゃいます。まずは医療機関で検査を受けて病気ではないことを確認すること。そして日々のセルフケア、特に呼吸を整えること。そのうえで、それでも続く機能的な不調があれば、背骨・肋骨・呼吸・内臓という体全体を見る整体という選択肢があります。
ネイチャーボディ鍼灸整体院では、あなたの状態を一緒に整理し、無理なく続けられる形を、伴走者として考えていきます。逆流性食道炎や慢性胃炎、自律神経失調症など、関連する症状のページもご用意していますので、あわせてご覧ください。ご不安な点やご質問は、LINEからお気軽にご相談いただけます。あなたの不調には、必ず理由があります。
この記事を書いた人
山﨑由浩(やまざき よしひろ)/ネイチャーボディ鍼灸整体院 代表。はり師・きゅう師(国家資格)。臨床歴21年・延べ16万回の施術・青葉台での開業から14年。18歳でこの業界に入り、日本と中国で東洋医学を21年実践してきました。医師・医療関係者からの紹介も多く、ベトナム・台湾・ハワイなど海外でも施術を行っています。
現在は、フランスの専門学校で国際基準の徒手療法(オステオパシー)を学んでいる在学中であり、国際ライセンス(D.O.)は未取得・取得を目指して学び続けている段階です。なぜ21年やった今も、わざわざ海外まで学びに行くのか。それは、日本の徒手療法・整体がまだ国際基準に追いついていないと感じているからです。臨床に立ち続けるなら、学び続けるのはマスト。良くならないまま放置されている患者さんがいる限り、私は学ぶことをやめません。この記事で、胃の不調を最新の研究にまで遡って説明しようとしているのも、その姿勢と地続きです。「世界基準の徒手療法 × 日本が世界に誇る鍼灸」で、検査では異常なしと言われた不調に向き合っています。
参考文献
- Lan L, et al. Acupuncture for functional dyspepsia (updated meta-analysis). Cochrane-registered update. 2026. PMID: 41737400
- Ho RST, et al. Acupuncture for functional dyspepsia. Cochrane Database Syst Rev. 2014. PMID: 25306866
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- Zheng HZ, et al. Acupuncture versus Sham Non-Acupoint Acupuncture for Irritable Bowel Syndrome. Gastroenterology. 2026. PMID: 42413705
- Acupuncture increases parasympathetic tone, modulating HRV: systematic review and meta-analysis. Complement Ther Med. 2023. PMID: 36494036
- Effectiveness of spinal manipulation in influencing the autonomic nervous system: a systematic review and meta-analysis. J Man Manip Ther. 2024. PMID: 38044657
- Effects of spinal manipulation and myofascial techniques on heart rate variability: a systematic review. J Bodyw Mov Ther. 2018. PMID: 29332747
よくある質問(Q&A)
Q. 機能性ディスペプシアと自律神経失調症は、必ずセットで起こるのですか?

必ずではありませんが、同時に抱えている方はとても多いです。胃の動きや胃酸の分泌は自律神経がコントロールしているため、めまい・動悸・のぼせ・眠りにくさといった自律神経失調症の症状と、胃もたれ・胸やけなどの胃症状が重なって現れやすいのです。とはいえ、胃症状だけの方、自律神経症状だけの方もいます。まずは医療機関でそれぞれの状態を確認し、どちらがどう関わっているかを整理していくのが現実的です。
Q. 胃薬を飲んでいますが、整体や鍼灸を併用しても大丈夫ですか?
基本的には併用いただけますが、まずは処方している医師にご相談ください。整体・鍼灸は薬の代わりではなく、検査で異常が見つからない機能的な部分(背骨・肋骨・呼吸・内臓の膜の状態など)を補う位置づけです。服薬内容への効果を約束するものではありませんし、服薬は自己判断で中断せず、必ず医師の指示に従ってください。薬でその場のつらさをやわらげながら、乱れやすい状態そのものを整えていく、という役割分担で考えていただくのがよいと思います。
Q. どのくらいのペースで整体に通えばよいですか?
状態やライフスタイルによって異なりますが、初期は少し間隔を詰めて(1〜2週間に1回程度)体の変化を確認し、落ち着いてきたら間隔を空けていくのが一般的な考え方です。ネイチャーボディ鍼灸整体院では「約1か月、症状が出ず良い状態を保てること」を卒業の目安にしています。その後は、月1回〜3か月に1回程度のメンテナンスとして続けられる方もいます。無理に通院をおすすめすることはありません。
Q. 初回の整体では、いきなり胃を触るのですか?
いいえ、いきなり胃だけを触ることはしません。まずカウンセリングで、胃の症状だけでなく、背骨・肋骨・呼吸の状態、睡眠、食習慣、ストレス、過去の大きな衝撃(事故など)まで幅広くうかがいます。そのうえで、痛い場所・不調のある場所だけでなく、その原因がどこから来ているのかを全身から確認していきます。胃を包む膜の状態を触れて確認することもありますが、それは体全体を見る流れの中の一部です。
Q. ストレスが原因と言われました。ストレスを減らせば自然に治りますか?
ストレスを減らすことは大切ですが、それだけで必ず症状がなくなるとは言い切れません。機能性ディスペプシアには、胃の運動機能・知覚の過敏さ・食習慣・自律神経のバランス・呼吸の浅さなど複数の要素が絡んでいることが多いためです。しかも、ストレスそのものを取り除くのは現実には難しいことが多い。だからこそ、体の側(呼吸・姿勢・背骨・肋骨)を整えることで、こころの症状も落ち着いてくることがよくあります。ストレス対策だけに頼らず、体の状態と生活習慣を合わせて整えるのが現実的です。
Q. なぜ「胃の不調」なのに背中や肩を診るのですか?

胃腸をコントロールする自律神経(交感神経)が、背骨(特に胸椎)のわきを通って内臓へ伸びているからです。背骨がゆがみ姿勢が崩れると、肋骨の動きが落ちて呼吸が浅くなり、自律神経が乱れやすくなります。さらに、内臓は膜(ファシア)で背骨や横隔膜とつながっているため、胃の緊張が背中や左肩の張りとして現れることがあります。「胃だから胃だけ」では戻りやすいのは、この体全体のつながりに手が入っていないためです。
Q. ピロリ菌を除菌したのに胃の調子が戻りません。なぜですか?
ピロリ菌の除菌で改善する方もいますが、除菌しても不調が残る方は少なくありません。この場合、胃カメラで炎症も確認できないのに症状が続く「機能性ディスペプシア」の状態と考えられます。菌や炎症という「病理」の問題は解決したけれど、胃が正しく動けていない「機能」の問題が残っている、という状態です。機能の問題には、自律神経・呼吸・背骨・内臓の膜といった側面から整えるアプローチが選択肢になります。
Q. 若い世代でも起こりますか?
はい。中学生・高校生など若い世代でも、自律神経に関わる不調や胃腸の症状でご相談にいらっしゃる方がいます。若い世代は、ストレス・睡眠不足・生活リズムの乱れ・運動不足などの影響を受けやすい傾向があります。若い方の場合は背骨・姿勢を整えることで変化が出やすいことも多いのですが、年代を問わず、まずは医療機関で確認したうえで、生活習慣(特に睡眠と呼吸)の見直しから取り組むのが基本です。
Q. 一度良くなっても再発しますか?予防はできますか?
再発することはあります。機能性ディスペプシアは生活リズム・ストレス・食習慣・呼吸の浅さと関わることが多いため、症状が落ち着いた後も、ゆっくり吐く呼吸・腹八分目の食事・規則的な睡眠・軽い運動を続けることが再発予防につながります。忙しい時期やストレスが強い時期に戻りやすいと感じる方は、早めにセルフケアを見直したり、体の状態を確認しておくのも一つの方法です。ネイチャーボディ鍼灸整体院では、症状がない時期のメンテナンスも承っています。
Q. 整体は保険が使えますか?費用はどう考えればよいですか?
ネイチャーボディ鍼灸整体院は自費診療です。健康保険は病名の付く病気やケガの治療に使う制度で、背骨・肋骨・呼吸・内臓の膜といった全身の機能を総合的に評価して整えるアプローチは保険の範囲では対応が難しいため、自費としています。費用については、その場しのぎを繰り返して長引かせるより、原因となっている状態そのものを整えて「卒業」を目指すほうが、結果的に納得のいく選択になりやすいと考えています。初回に状態を確認し、おおよその見通しをご説明しますので、そのうえでご判断いただけます。







